大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)912号 判決 1986年5月09日
原告
中島正幸
中島徳子
右両名訴訟代理人弁護士
小原久幸
被告
株式会社鴨川グランドホテル
右代表者代表取締役
鈴木政夫
右訴訟代理人弁護士
矢可部一甫
主文
一 被告は、原告正幸に対し金一八九四万二六二四円、原告徳子に対し金一八二四万二六二四円及び右各金員に対する昭和五七年一二月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用はこれを一〇分し、その七を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
四 この判決は、第一、三項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告中島正幸に対し金三一〇〇万三九九三円、原告中島徳子に対し金二九〇〇万三九九三円及び右各金員に対する昭和五七年一二月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
原告中島正幸(以下「原告正幸」という)と原告中島徳子(以下「原告徳子」という)は夫婦であり、中島伸人(以下「伸人」という)は原告らの三男である。
被告は山口県豊浦郡豊北町大字神二〇四五番地において「ホテル西長門リゾート」(以下「本件ホテル」という)を経営している。
2 事故の発生
(一) 原告らは、昭和五七年八月二四日、伸人(当時一七歳)を含む家族四名及び親戚の者一二名の合計一六名で本件ホテルに宿泊に行つた。
(二) 伸人は、本件ホテルに到着してから約三〇分後の午後三時ころ、兄の中島史之(当時一八歳。以下「史之」という)、従兄弟の中島英樹(当時一五歳。以下「英樹」という)他二名と共に本件ホテルの北側にある被告の設置、管理にかかる海水浴場(以下「本件海水浴場」という)に泳ぎに行つた。伸人らは、本件海水浴場中央付近の膝位の水位のところまで入つていつたところ、潮の流れが異常に速いうえ海底の岩が滑りやすいため、五分もたたないうちに足をとられて立ち上がることができなくなり、岸に戻ろうとしたが潮の流れに阻まれ、史之、英樹はかろうじて岸に泳ぎ着いたが、伸人は潮にのまれて水死した(以下、右死亡事故を「本件事故」といい、事故発生現場を「本件事故現場」という)。
3 被告の責任
(一) 工作物責任
(1) 本件海水浴場は、部外者が立入りできないよう鉄条網で外部と仕切られ本件ホテルの利用客のみが使用できるようになつているから、被告の設置、保存にかかる工作物である。
(2) 本件事故現場は、響灘の黒潮が日本海と出会う所で、以前から海士ケ瀬(あまがせ)と呼ばれ、周辺の海に比べ異常に潮の流れが速いうえ水温が低くなつているため海水浴場としては極めて危険な場所である。
(3) 被告は、本件事故現場の危険性を熟知していたのであるから、本件海水浴場の設置者として、旗、看板、ブイ等の標識により遊泳区域を指定し、危険区域での遊泳を禁止する人的、物的設備を備え、かつ水難事故に備え救命ボート、浮き輪、人工蘇生器等の救命用具及び救助要員等の救助体制を整えておくべきであつた。しかるに、本件事故当時、本件海水浴場には監視塔、監視人を欠き、危険区域を知らせる標識としては「天ケ瀬付近遊泳禁示区域」と書かれた縦二〇センチメートル、横三〇センチメートルの小さな目立たない立て札が一本立てられていたのみで、ブイや柵は皆無であつた。本件事故はこのような本件海水浴場の設置、保存の瑕疵により発生したものであるから、被告には民法七一七条に基づき原告らの被つた後記損害を賠償する義務がある。
(二) 不法行為責任
仮に被告に工作物責任が認められないとしても、被告は、本件海水浴場の設置、管理者として本件海水浴場の利用者に本件海水浴場内の危険個所の存在を告知して注意を促すとともに、その安全確保のため必要な人的、物的設備を完備させておくべき注意義務があるにもかかわらず、原告らに海士ケ瀬の危険性を告知せず、かつ前記3(一)(3)記載のとおり安全確保のための措置を講じなかつた過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づき原告らの被つた後記損害を賠償すべきである。
(三) 債務不履行責任
被告は、本件ホテルの宿泊契約上、宿泊客に対しその生命、身体及び財産の安全を確保するため万全の措置を講ずべき債務を負つているところ、前記のとおり宿泊客の安全確保のための措置をとらなかつたため本件事故を発生させたものであるから、民法四一五条に基づき原告らの後記損害を賠償すべきである。
4 損害
次のとおり、本件事故により原告正幸は合計三一〇〇万三九九三円、原告徳子は合計二九〇〇万三九九三円の損害を被つた。
(一) 伸人の逸失利益 各一六五〇万三九九三円
伸人は本件事故当時一七歳の男子で、生存していれば満六七歳まで稼働でき、その間年間三八一万五〇七〇円(昭和五六年度賃金センサスの男子労働者平均賃金収入年間三六三万三四〇〇円に一年間のベースアップ分五パーセントを加算したもの)を下らない収入を取得しえたから、右金額から生活費五〇パーセントを控除したうえでライプニッツ方式により中間利息を控除して同人の逸失利益を計算すると三三〇〇万七九八六円となり、原告らはこれを各二分の一の割合で相続した。
(二) 原告らの慰藉料 各一〇〇〇万円
原告らは最愛の子供を亡くしたうえその死体は四日間も発見されなかつたもので、その精神的苦痛に対する慰藉料は各一〇〇〇万円が相当である。
(三) 葬儀費用 原告正幸二〇〇万円
原告正幸は伸人の葬儀費用として次のとおり合計五六六万三五一〇円を支出した。右はその内金である。
イ 葬儀屋費用 一四〇万四七五〇円
ロ 火葬場費用 二万六九〇〇円
ハ 寿司、御茶菓子代 四七万八〇三〇円
ニ 酒等 三万二八三〇円
ホ お寺費用 五八万五〇〇〇円
ヘ 教会返礼 五万円
ト 高校返礼 五万円
チ 中学返礼 五万円
リ 町内会返礼 三万円
ヌ 老人会返礼 三万円
ル 位牌代 九八〇〇円
ヲ 墓地代 二九一万六二〇〇円
(四) 弁護士費用 各二五〇万円
5 よつて、原告らは被告に対し、民法七一七条、七〇九条または四一五条に基づき、原告正幸において三一〇〇万三九九三円、原告徳子において二九〇〇万三九九三円及び右各金員に対する本件訴状送達の日の翌日である同五七年一二月一八日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。
二 請求原因に対する認否及び主張
1 請求原因に対する認否
(一) 請求原因1、2(一)の事実は認める。
(二) 同2(二)中、伸人らが本件海水浴場中央付近の膝位の水位のところまで入つていつたことは認め、本件海水浴場が被告の設置、管理にかかること、潮の流れが異常に速いうえ海底の石が滑りやすく、立つているのも困難な状態だつたことは否認し、その余の事実は知らない。
(三) 同3(一)(1)の事実は否認する。
(四) 同3(一)(2)中、通常海士ケ瀬と言われる潮の立会い部分があることは認め、その余は争う。
(五) 同3(一)(3)中、本件海水浴場に監視塔、監視人のなかつたこと及び原告主張の立て札が立てられていたことは認め、その余は不知ないし争う。
(六) 同3(二)、(三)は争う。
(七) 同4中、(一)、(三)、(四)の事実は知らず、(二)は争う。
2 被告の主張
(一)本件海水浴場は、被告の設置、管理にかかるものではない。
(1) 本件海水浴場は西長門海岸県立自然公園内にあり、本件ホテルの敷地と同公園との境界は別紙図面の赤線部分である。したがつて、本件海水浴場は被告所有地、賃借地のいずれにも属さず、被告は右海面を占有、使用する何らの権原も有しないから、その管理義務を負わない。しかも、本件事故現場は、別紙図面点あたりの海岸沖合い二〇ないし三〇メートルあたりの深さ四〇センチメートルくらいのところにあり、被告の支配は全く及ばない。
(2) 本件海水浴場は自然海岸の一部にすぎず、人工は加えられていない。被告は別紙図面黄線部分にフェンスを設けているが、右フェンスは本件ホテル敷地と隣接する町道との境界として設けたもので砂浜及び海面を占有する目的で設置したものではなく、本件ホテル利用者以外の者も砂浜を通つて自由に本件海水浴場に立入りでき、被告がこれを制限したことはない。
(二) 通常海士ケ瀬として危険とされている場所は本件事故現場よりはるか沖合いにあり、本件事故現場は大人の膝程度の深さで潮の流れも足をとられるほど速くなく、危険な場所ではない。
(三) 被告は、次のような危険防止措置をとつていた。
(1) 本件事故当時、海水浴シーズンは終つており監視を必要としない時期であつたが、被告は念のため海面にロープを張つて泳ぐ場所を特定して示すとともにロープの外側に監視船を配置し、かつ海士ケ瀬付近には遊泳禁止の立看板を設けて宿泊客の安全を図つていた。
(2) 被告は、宿泊客に対し、到着と同時に、海で泳ぐ場合はロープで仕切つてある海面以外で泳がないこと、海士ケ瀬付近は景観として優れているが泳ぐことは危険であることを必ず説明し、本件においても、従業員は原告らに対し、宿泊室から海士ケ瀬付近を指し示しつつ同様の説明をした。
(四) 伸人は、原告らと共に遠路自動車を利用して本件ホテルに来て、相当の疲労があつたにもかかわらず、到着後休みもせずにすぐ海に入つたものであるから、同人に心臓発作等の異常が発生した可能性を否定しえない。
(五) したがつて、原告は、本件事故につき何ら責任を負うものではない。
三 抗弁(過失相殺)
伸人には、本件事故当時既に高校生でありながら指定された海面以外の場所にわざわざ行き、潮の流れの速さを感知したのに敢えて泳いだ過失があるから、損害額の算定にあたり右過失を斟酌すべきである。
四 抗弁に対する認否
抗弁は争う。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1(当事者)の事実は当事者間に争いがない。
二本件事故の経過
1 <証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 原告らは、昭和五七年八月二四日、伸人(当時一七歳)を含む家族四名及び親戚の者一二名の合計一六名で本件ホテルに宿泊に行き、同日午後二時三〇分ころ本件ホテルに到着した(右事実は当事者間に争いがない)。
伸人、兄の史之、従兄弟の本田重廣(以下「重廣」という)、同博和(以下「博和」という)、英樹の五名は、部屋に着くとすぐに海水着に着替え、本件海水浴場に出かけた。伸人らは海岸沿いに歩いて別紙図面点付近の瀬に至り、まず英樹、史之、重廣が別紙図面点の海に入り、伸人と博和は準備体操をした後にこれに続き、海岸から約一五メートル離れた地点で先に行つた三名と合流した。
(二) 右地点の海の深さは膝位までしかなかつたが、重廣は、下の足場が滑りやすく潮の流れもかなり速かつたため危険を感じ、他の四名に海から上がるように告げ、岸の方へ引き返した。この時、伸人と英樹は他の者より約一〇メートル沖まで行つており、英樹は、重廣の右指示には気付かなかつたが、海底が滑りやすく、また潮の流れも速かつたことから立つていられず四つん這いの格好になり波に乗つていたところ、気が付くと更に約一〇メートル沖まで流されていたため危険を感じ、やはり海岸に戻ろうと泳ぎ始めたが、潮の流れが強く戻るのが困難な状態であつた。
(三) この時、伸人も英樹の近くで四つん這いの状態になつて海岸の方へ戻ろうとしており、英樹に「助けてくれ」と言つていたが、英樹は自分が戻るのに必死で、伸人を助ける余裕はなかつた。岸には、まず重廣、博和、史之の三名が上がり、続いて英樹がたどり着いたが、重廣が岸に上がつて海の方を振り返つたときには、既に伸人の姿は見えなかつた。
(四) 重廣らの通報により約二〇分後に本件ホテルの監視船が、その約二、三〇分後に地元の漁業協同組合の船が来て伸人の救助、捜索にあたつたが、伸人を発見するに至らず、伸人は、四日後の同月二八日に本件事故現場付近の岩場で水死体となつて発見された。
以上の事実が認められ、<証拠>中、右認定に反する供述部分は、前掲各証拠に照らし容易に措信することができない。
2 右認定事実及び後記三(三)の認定事実によれば、伸人は、本件事故現場の海底が滑りやすいため立つていることができず、四つん這いの状態になつて岸に戻ろうとしたが、潮の流れが非常に速かつたため戻ることができず、潮に流されて溺死したものと認めるのが相当である。
三被告の責任
1 <証拠>を総合すると、次の事実が認められる。
(一) 本件ホテルの敷地たる被告所有、賃借地と国有地に属する海岸部分の土地との境界線は別紙図面の赤線部分である。被告は、西長門海岸県立自然公園である右海岸及び付近の海の景観を利用し、後述の海士ケ瀬を含むホテルからの眺望を本件ホテルの呼び物にしている。
(二) 被告は、本件ホテルの宿泊客以外の者のホテル敷地への侵入を防ぐため、ホテル敷地と町道との境界である別紙図面記載の黄線部分にフェンスを設けている。もつとも、フェンス南端の切れ目のところにはコンクリート階段が設置されており、右階段を通つて外部からホテル敷地内に入ることは可能である。また、フエンスの北側からも海岸沿いにホテル敷地に入ることが可能である。
(三) 本件事故現場は海士ケ瀬と呼ばれ、響灘の黒潮と日本海とが出会い潮と潮とがぶつかり合つて非常に波がたつところから、その景観が本件ホテルの呼び物の一つになつているが、潮の流れが非常に速いうえ、海底には直径一〇センチメートルくらいの小石が集積して足元が不安定であり、特に水深五〇センチメートル位のところでは小石に海草が生えていて滑りやすく、立つていることが困難であるため、海水浴には危険な場所である。
(四) 本件事故当時、被告は、別紙図面点の海岸から陸の方へ約二〇メートル離れた地点に「天ケ瀬付近遊泳禁止区域」と記載した縦約三〇センチメートル、横約四〇センチメートルの立て札を設置していたが(右事実は当事者間に争いがない)、伸人らは右立て札の存在に気付かなかつた。また、被告は、夏の海水浴シーズンには監視船を海に配置し、海岸にはアルバイトの監視人を置いていたが、本件事故の前日である同五七年八月二三日に監視人を期限切れで解雇しており、本件事故当時、海岸に監視人はいなかつた(右立て札の存在及び本件事故当時監視人がいなかつたことは当事者間に争いがない)。なお、被告は、別紙図面点の南側の同図面「西長門海岸県立自然公園」と記載したあたりの海を遊泳区域としていたが、本件事故当時、右遊泳区域を示すブイ、ロープ、旗等は設置していなかつた。
(五) 本件ホテルの従業員である田尻智江美は原告ら一行を部屋に案内した際、原告らに対し、海士ケ瀬付近での遊泳が危険であることを告げたが、衆知徹底しなかつた。
以上の事実が認められ、<証拠>中、右認定に反する供述部分は、前掲各証拠に照らし容易に措信し難い。
2 工作物責任について
原告は、本件海水浴場が被告の設置、保存にかかる土地の工作物であると主張するが、前認定事実によれば、本件海水浴場は国有地に属する自然の海岸であつて、被告はこれに何ら手を加えていないことが認められるから、本件海水浴場は民法七一七条にいう工作物とは認められない。したがつて、工作物責任の主張は失当である。
3 不法行為責任
前認定事実によれば、被告は別紙図面記載の黄線部分にフェンスを設けて本件ホテルと海岸を外部から遮断し、右海岸を本件ホテルの経営に利用していたのであるから、本件ホテルの敷地に接する本件海水浴場を含む海岸の土地及び海は、事実上、被告の支配、管理下にあり、その一部をホテル利用客の海水浴場に供していたと認めるのが相当である。そして、本件海水浴場には海水浴に危険な海士ケ瀬があるのであるから、被告は、本件ホテルを利用する海水浴客の生命、身体の安全確保のため適切な措置をとるべき注意義務を負つていたと解すべきところ被告が海水浴客の安全確保のためとつていた措置は極めて不十分なものであるから、被告には右注意義務を怠つた過失があつたと言わざるをえない。そしてこのため伸人は危険個所の存在に気付かず本件事故に遇つたのであるから、被告は原告らに対し不法行為責任を負い、原告らの後記損害を賠償すべき義務がある。
四損害
1 伸人の逸失利益 各一六四一万八〇三五円
伸人は、本件事故当時一七歳の男子で、高校卒業後の満一八歳から満六七歳まで四九年間は就労可能であり、その間年間三七九万五二〇〇円(労働省政策調査部発行の賃金構造基本統計調査昭和五七年第一巻第一表による同年度高卒男子労働者の平均賃金収入)を下らない収入を取得しえたから、右金額から生活費五〇パーセントを控除したうえでライプニッツ方式により中間利息を控除して同人の逸失利益を計算すると三二八三万六〇七〇円となり、原告らは伸人の父母であるから各一六四一万八〇三五円を相続したものと認める。
2 原告らの慰藉料 各七五〇万円
<証拠>によれば、原告らが伸人の死亡により受けた精神的苦痛に対する慰藉料は各七五〇万円と認めるのが相当である。
3 葬儀費用等 原告正幸一〇〇万円
<証拠>を総合すれば、伸人の葬儀は原告正幸によつて行われ、正幸は、葬儀費用及び位牌、墓地代として合計五六六万三五一〇円を支出したことが認められるところ、右金員中、本件事故と相当因果関係を有するものとして被告に請求しうべき金額は金一〇〇万円とするのが相当である。
4 過失相殺
前記認定事実によれば、被告の従業員である田尻智江美は原告らに対し海士ケ瀬での遊泳が危険であることを告げ、また、被告は本件事故現場付近に遊泳禁止の立て札を設けていたのであり、他方、伸人らは不案内な海であるのに何らの注意を払わず直ちに本件事故現場で遊泳したのであるから、本件事故発生については原告らの過失も認められ、その過失割合は三〇パーセントとするのが相当である。
したがって、原告正幸の損害は一七四四万二六二四円、同徳子の損害は一六七四万二六二四円である。
5 弁護士費用 各一五〇万円
<証拠>によれば、原告らが本件代理人に本訴の追行を委任し報酬の支払約束をしたことが認められるところ、本件事案の難易、審理経過、本訴認容額等に鑑み、本件事故と相当因果関係を有するものとして被告に請求しうべき金額は各一五〇万円とするのが相当である。
五よつて、原告らの本訴各請求は、原告正幸が一八九四万二六二四円、原告徳子が一八二四万二六二四円及び右各金員に対する本件訴状送達の日の翌日である同五七年一二月一八日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官蒲原範明 裁判官川久保政德 裁判官阿部正幸は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官蒲原範明)